ラムドの道は神殿に続く  夢うつつ

私はエレベータで、上階へと向かっている。

途中の階で、若い男女が乗り込んできた。

女子の方が微かに口許に笑みを浮かべながら

私を一瞥し、不意にある階のボタンを押した。



しばらく上昇すると、彼女の押した階でエレ

ベータが停まるや否や突然、横方向に建物を

飛び出し、宙に浮かんでいると思しきレール

に沿って、前方へゆっくりと進み始めた。



外は夜だった。エレベータの表面が透明化し

上下左右、外の様子が見渡せた。建物の上階

に行く目的を完全に忘れ、自動運転列車と

化したエレベータに進退を任せることにした。



途中で若い男女が降りる際、女子の方が、

「夜空の星が、星の形に集まるとき」

と、心に直接伝えてきた。エレベータは更に

進み続け、終着駅のような地点に辿り着いた。



そこで降りると、何かのサインのように上空

で星が瞬くのが視界に入った。すると実体は

ないが、圧倒されるような威厳を感じさせる

<存在> がすぐ傍に現れ、彼もまた無言で

心に直接、次のような言葉を伝えてきた。



「“重なり” の影響により、迷い込みやすく

なったようじゃな。やむを得ずとはいえ、その

〔傷〕 は我々の治癒が追いつかぬほど著しく

深い。それを考慮し、そなたを “ある場所” に

連れてゆく。我々の守りし不可侵の聖域に。



その場所は現在の存在形態の認識では未知

と映るやもしれぬが、別の認識においては

懐かしき故郷のような場所でもある。さぁ、あの

上空の星々が星の形を成したその時、中心に

【扉】 が現れる。そこに飛び込むがよい」



・・・と、実体はないが、悠久の時を重ねて

きたであろう老いたる長の申し出を了承した。

空の星々が星の形を成す時を見計らい、意識

をその中心に位置させ、瞬時に移動を試みた。



移行のまさにその瞬間、忘れてたと云わんば

かりに、再び老いたる長の思念が届けられた。

「そなたにとって未知の場所ゆえ、もし行き先

を思い出せなければ、《ラムドの道》 を辿るが

よい。その道はある 【神殿】 に繋がっておる。

入口にてそなたを待つ者の指示に従いなさい」



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穏やかでない現地調査員  夢うつつ

どうやらこの施設に不審者が侵入したようだ。

奇妙な格好の大男と小柄な男の二人組らしい。

屈強なガードマンも軽くあしらわれ、二人は

今も施設内のどこかを徘徊しているとのこと。



あちこちから悲鳴が聞こえる。階ごとの全ての

部屋を出たり入ったりしているようだ。誰かを

探しているのだろうか・・・? 既にここから近い。



自室を出て、最短のルートで施設の入口に

向かうと、まるで待っていたかのように二人が

立ち塞がった。人間離れした異様な雰囲気だ。

応戦するのは不利と判断し、何とか迂回して

窓から身を投げ出し、入口まで辿り着いた。



施設の外に出るや否や、強烈な違和感を覚え

(まさか・・・)と頭をよぎった瞬間、背後から

肩に誰かの手が置かれた。「ちょっと待って」



「あ、マヤ?! ということは・・・?」

「そういうこと。もう起きてる?」

「ばっちり目が覚めた。で、この施設は?」



「フェイクよ。あの二体を呼び寄せるための」

「反乱分子の送り込んだ刺客みたいな?」

「刺客というより、現地調査員ね」

「調査員にしてはいささか乱暴だったよ」

「施設の消滅とともに、放っておいてもあの
 
二体は母星に戻らざるを得なくなるはず」



「そういえば、パピコは・・・?」

「彼女は例の一件で謹慎中。しばらく下に
 
降りるのは許可されないみたい。だから

今回は私が代わりに来たというわけ」



「なるほど、それでこれからどこに?」

「移動手段が大事なの。今回は飛行でなく

天空のジェットコースターで向かうわ」



「えっ!! “あれ” に乗るのかぁ・・・」

「あなたが苦手なのは知ってるけど今回
 
ばかりは我慢して。さ、行きましょ」

「長い夜になりそうだ」



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器から香る色気  エッセー

今年の裏テーマとして、《色気》 を挙げたい。

とはいえ、一般的な捉え方やイメージの色気

ではなく、幾分、異なった意味合いを含む。



私たちの “器” が整いつつある昨今、その器

が無色透明で無味無臭でも問題はないのだが、

喩えるなら、マリリンのシャネル5番のように

裸にまとう香水があっても支障にはならない。



ただし、その香水は慎重に慎重を期して選ばな

ければならない。もし選べなければ、逆に着け

ない方が好ましく、無理せず風邪を引かない

よう、寝間着をお召しになることを提案したい。



《色気》 の陰に潜むのは、頑なな真面目さや

深刻さだ。それらは適切な香水の選択を阻む。

なぜなら視界に曖昧な偏見の種子を宿すからだ。

事物事象に対する己の主旨さえずらしかねない。



その種子は一定方向にしか伸びることはなく、

多様性と柔軟性を欠くだろう。《色気》 とは

自己を通した豊かな収穫であり、水の花々の

透明な色彩のようなもの。それは整えられた

“器” のみが初めてまとうことのできる果実だ。



魅力は感情に訴えるが、色気は感覚に訴える。

自分という “器” に最適な香水をまとうこと・・・

その微香は、数多の可能性を呼ぶ合図となる。



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