遂に、この日が、やって参りました。
当文章園の管理人の菅井と申します。
遂に文章達に与えるエサが底を尽きました。
私が居る事務室の外からは、今でも腹を空かした可哀想な文章達の空虚な鳴き声が聞こえて参ります。
こうなってしまったのも全て、園長の責任なのです。
数年前から園長の言動の変化には、薄々私も感付いてはいたのですが、何も問い質せない侭にこの日を迎えてしまった事に深い後悔の念を覚えます。
園長は、「眠るだけで痩せるダイエット枕」なるものの開発に巨額を投資していたのです。
この文章園を担保に入れて、2億の借金をし、全て枕に投資していたというのです。
勿論、そんな枕などは存在せず、まんまと詐欺に引っ掛かってしまった時には、もう遅過ぎました。
この文章園も競売に掛けられます。
私が連れ帰って面倒を見るには、文章の数は多過ぎました。
この文章達と、いっその事、心中を図ろうかと思いましたが、私も矢張り卑しい人間の一人。踏み止まった侭一つの決断を致しました。
「放し飼い」で御座います。
私は、これから全ての檻の鍵を開けて、文章達を解放致します。
勿論、全ての文章達は人間に飼われてきたので、自活能力が無い事は解っております。
しかし、他に如何する事も出来無かったのです!
私は、これから生涯、文章達に顔向け出来ずに、重苦しく湿ったものを背負った侭、惨たらしく生き恥を曝す日々を過ごすでしょう。
もう、皆様に御逢いする事も無いでしょう。
園長は恐らく、岐阜で出版業を営む実家へ雲隠れしている事でしょう。
私は皆様の事を忘れる事は無いでしょう。一度、御顔を拝見したら絶対に忘れないのが、私の唯一の取り柄なのですから。
しかし皮肉な事に、其の取り柄が、これからは生涯の私の重荷になっていく事を、何よりも悔しく、哀しく思います。
最後に皆様。
もう一度、この文章達を御覧になって下さい。
時間がありません。
それでは、これから、檻を解放致します。
どうか御前達。御願いだ。
許してくれなんて言わない。私を呪っても良い。喰い殺したって構わない。
けれど、どうか…
生きてくれ。
さようなら。
事務室を出て檻へ向かう菅井。
誰も居無くなった事務室。
事務室の奥の園長室には、「ダイエット枕」の偽の資料や沢山の借用書が散在していた。
其の中に一枚のメモが紛れ込んでいた。
岐阜で出版業を営む園長の実家の住所なのだろうか?
其のメモの裏にはこう記されていた。
触るな危険
平成18年9月20日 直情径行.com 未完


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