「よいじゃないかえ」
よいじゃないかえあの隅田川
月にも花にも雪見にも、ササよいじゃないかえ。
よいじゃないかえ腹立てずとも
話せば互いにわかる胸、ササよいじゃないかえ。
よいじゃないかえあの加茂川の
水に流せばえじゃないか、ササよいじゃないかえ。
「宵の口説」
宵に口説に白けた後を、啼いて通るや時鳥
松の嵐に夢うち醒めて、明日の別れが、ああ思わるる。
「ヨイヤナ」
祝いめでたの若松様よ、枝も栄ゆるその葉も繁る
繁る小枝に風が鳴る、ヨーイヤナー。
これの座敷は祝いの座敷、鶴と亀との舞い遊び
ヨーイヤナー。
これのお家はようできました、白い壁をば塗り果てて
床にかけたる掛け物は、上から鶴の舞い遊び
下から亀が這い登る、鶴と亀との楽遊び、ヨーイヤナー。
蝶よ花よと育てた娘、今宵さこちらに下さるからは
さぞやお里は淋しかろ、ヨーイヤナー。
淋しうござんす我が古里は、今日か明日かと指折り数え
三日帰りを待つばかり、ヨーイヤナー。
朝日輝く息子を持ちて、夕日差し込む嫁とりなさる
さぞや親さま嬉しかろ、ヨーイヤナー。
鳥も通わぬ玄海灘を、お出で下さる御客さまは
末は鶴亀五葉の松、ヨーイヤナー。
あなた京都の禁裡がうちに、お住いなされる御身分
私ゃその裾流れ川、川の底ゆく恋や鮒
お手下げ引き上げ下しゃんせ、ヨーイヤナー。
花はいろいろ数あるけれど、右近左近の花が咲く
吉野の山にも数あるけれど
あなたに見かえの花はない、ヨーイヤナー。
帯になりたやあなたの帯に、昼はお腰に巻き立てられて
夜はあなたに添い寝する、ヨーイヤナー。
私ゃ以前は花にも咲いた、今は行っている他人の里に
生まれ故郷が懐かしい、ヨーイヤナー。
あなたのようなよい人は、唐天竺にも都にも
大阪表にゃ咲く花も、あなたにまさる花はない
ヨーイヤナー。
申し上げます姑御様よ、まだもこの娘はもの馴れませぬ
万事よろしくお願いします、ヨーイヤナー。
申し上げます仲立ち様よ、もしもこのこと縺れた時にゃ
万事よろしく頼みます、ヨーイヤナー。
あなたご近所お隣様よ、梅の若木を植えおくほどに
散りゆくときは頼みます、ヨーイヤナー。
さても見事な祖母山つつじ、枝は南郷に葉は熊本に
花は野尻の川上に、ヨーイヤナー。
もうやお立ちかお名残惜しや、もしも道々雨など降れば
わしが涙と思いなれ、ヨーイヤナー。
「与勘兵衛」
与勘兵衛坊主が二人出た、ソコソコ
一人は確かな与勘兵衛、一人ゃしんしん信田の
森に住むではないかいな、この実与勘兵衛
一反畑のぼうぶらが、なる道ゃ知らずに這い歩く。
今年は豊年満作じゃ、ソコソコ
庄屋もめぼしも百姓も、猫もねんねんねずみも
猫もねずみもすりこの鉢かいな、あら実与勘兵衛
一反畑の莢豆が、一莢走れば皆走る。
木立の庄屋さん何が好き、ソコソコ
恥ずかしながらも唐芋好き、朝もねんねん寝起きから
赤い唐芋の焼き冷まし、この実与勘兵衛
お前家持ちわしゃ子持ち
下から持ちゃげるモグラモチ。
私とお前さんの若い時ゃ、ソコソコ
女郎か卵かと言われたが、今はとんとん年が寄って
寺の過去張にしっかとつけられた、あら実与勘兵衛
やっとこやしまのほしかの晩
ほしかの晩なら宵から来い。
真実保名さんに好きたくば、ソコソコ
榊の前と偽りて、七日七夜さ葛の葉と
怨み葛の葉と寝たならば、あら実与勘兵衛
一反畑のぼうぶらが、なる道ゃ知らずに這い歩く。
「与作」
与作思えば照る日も曇る、ハイハイドウドウ
関の小万が涙の雨よ、ほととぎすナー
本尊かけたか、コチャ二世かけたエ。
「与作丹波」
与作丹波は馬追なれど
今じゃお江戸で刀を差しゃる
イヤオシャシャンノシャン、トコトトントトン
しゃんと差したる与作は、さてもさてもおんやんや
サー与作さ、与作さ、与作と二、三度、四、五度
与作来もせで権三がわせた
権三何しに川へと跳ね込め
イヤオシャシャンノシャン、トコトトントトン
差した与作は、さてもさてもおんやんや
与作差したる長脇差は
鞘が三十目に提緒が二十目、中は桧の荒削り
イヤオシャシャンノシャン、トコトトントトン
与作妹は猫の子を孕んだ
生んで育てて鼠をとらしよ
イヤオシャシャンノシャン、トコトトントトン
コレヤーヤーでさてもさても
ヨイヨイヨイヨイ、ヨイトナー。
「夜桜や」
夜桜や、浮かれ鴉がまいまいと
花の木陰に誰やらがいるわいな
とぼけしゃんすな、芽ふき柳が風に揉まれて
エーふわりふわりふわりと、おおさそうじゃいな
そうじゃわいな。
「よさこい節」
土佐の高知の播磨屋橋で
坊さんかんざし買うを見た、ヨサコイヨサコイ。
御畳瀬見せましょ浦戸を開けて
月の名所は桂浜、ヨサコイヨサコイ。
土佐の名物珊瑚に鯨
紙に生糸に鰹節、ヨサコイヨサコイ。
わしのトイチは浦戸の沖で
雨にしょんぼり濡れて鰹釣る、ヨサコイヨサコイ。
言うたちいかんちやおらんくの池にゃ
潮吹く魚が泳ぎよる、ヨサコイヨサコイ。
はらみの廻し打ち日暮れに帰る
帆傘船年に二度取る米もある、ヨサコイヨサコイ。
よしや南海苦熱の地でも
粋な自由の風が吹く、ヨサコイヨサコイ。
浦戸出るときゃ涙で出たが
お鼻廻れば小唄節、ヨサコイヨサコイ。
西に竜串東に室戸
中の名所は桂浜、ヨサコイヨサコイ。
土佐はよい国南を受けて
薩摩おろしがそよそよと、ヨサコイヨサコイ。
「与三郎」
しがねえ恋の渦巻も、流れ流れて木更津から
廻る月日も三年越し、見越の松も色変えぬ
黒板塀の源氏店。
帰った後はさし向けえ、うむ妬きやがるなあ
よしてくれ、そんなんじゃねえや。
門に橘、格子に牡丹、内の様子を菊の花。
「吉野山」
吉野山、峰の白雪踏み分けて
入りにし人の影ぞ床しき。
「吉原都々逸」
粋な茶屋から芸者が出ます
十町さんが飛んで来て
芸者の袖ちょいと引きゃ
芸者逃げます十町さんが追っかけます
ハーハー、レコずくじゃレコずくじゃ。
「吉原見たか」
吉原見たか花見たか
花は見たれど花魁道中まだ見ない
オセセノ背中は灸だらけ
黙って猪目へ灸据えろ
熱かった熱かった。
「淀の川瀬」
淀の川瀬のナー、景色をここに引いて上がるヤンレ
三十石船、清き流れを汲む水車
巡る間ごとに皆水馴竿、さいた盃押さえてすけりゃ
酔うて伏見へくだまき綱よ、こうした所が千両松
ヨイヨイヨイヨイヨイヨイヨイ。
「淀の川瀬」
淀の川瀬の水車、誰を待つやらくるくると
水を汲めとは判じ物、汲むは浮世の倣いぞや
アリャアレソリャソレ、柄杓さんをまねる
ヨーイヨーイヨーイヤナー。
一字千金二千金、三千世界の宝ぞや
教える人に習う字の、中に交わる菅秀才
アリャソレソリャソレ、武部源蔵夫婦の者が
ヨーイヨーイヨーイヤナー
ここを尋ねて来る人は、加古川本蔵行国が
女房戸無瀬の親子連れ、道の案内の乗り物を
アリャソレソリャソレ、かたえに控えただ親子連れ
ヨーイヨーイヨーイヤナー
かたえに直れば女房も、押しては言わぬもつれ髪
鬢の解れをなぜつける、櫛の胸より主の胸
映してみたや鏡たて、アリャソレソリャソレ
映せば映る顔と顔、ヨーイヨーイヨーイヤナー。
引けよ鈴虫それぞとは、かねて松虫ひなぎぬも
手燭携え庭に下り、母様お越し召されたか
アリャソレソリャソレ、いざ此方へとあの呼ぶ世の
ヨーイヨーイヨーイヤナー。
「淀の車」
淀の車は水ゆえ廻る、私ゃ悋気で気が廻る
ほんに遣る瀬がないわいな、実々遣る瀬がないわいな。
人目厭うて裏道廻る、知らず待つ身は気が揉める
ほんに遣る瀬がないわいな、実々遣る瀬がないわいな。
「世の中よござんしょ」
航海開けて道まで開けて、馬車や人力車
まだまだよいのが陸蒸気
トコ世の中よござんしょ。
写真に油絵、玉撞き場、並ぶ異人館
幻灯、ラベイカ、オルゴール
トコ世の中よござんしょ。
「米山くずし」
笠を手に持ち皆さん去らば
いかいお世話にササなりました。
箱根八里は馬でも越すが
越すに越されぬササ大井川。
「米山甚句」
連れて行かんせ、エー米山の薬師
一つ身のため、エー主のため
主のため。
雪や氷で、エー閉ざした中に
故郷の話の、エー花が咲く
花が咲く。
櫓太鼓に、エーふと目を覚まし
東京名所を甚句に読めば、芝か上野か浅草か
春は花咲く向島、隅田川には都鳥
三十六間掛け渡し、あれが名代の両国か
明日はどの手でスッテンコロリと
投げてやろ、投げてやろ。
富士の高嶺に
エー雪が降ったり積んだり解けたり流れたり
三島女郎衆の手水紅カネ、化粧水
夜明けの酔い醒まし、酔い醒まし。
頚城見納め、エー米山三里
峠越ゆれば、エー柏崎
柏崎。
「四方も霞」
四方も霞に棚引きて、ほころび出だし梅ヶ枝に
まだ鶯のかたことまじり、残りの雪のむらなく消えて
野辺に若草萌え出づる、風がもて来る梅ヶ香ゆかし
心浮き立つ春景色。
「よりを戻して」
よりを戻して逢う気はないか
未練で言うのじゃなけれども
鳥も枯れ木に二度とまる、ちと逢いたいね。
岡惚れしてさえ浮名が立つに
知れたらどうする新聞に
ほんに浮世はままならぬ、ちとじれったいね。
たとえ文でも便りがあれば
待つ夜焦がるる胸の内
思い遣る瀬はあるわいな、ちと待ちかねる。
可愛がられる座敷を抜けて
逢いに来たのに水臭い
浮気するにもほどがある、ちとおかしゃんせ。
「夜の雨」
夜の雨、もしや来るかと畳算
紙で蛙のまじないも、虫が知らせて灯の
丁字もとんだ今時分、気まぐれさんす
ええ、主の声。