2006/12/15
「夕霧」
編み笠に
包む紙子の文字のあや、師走の風のしみじみと
可愛い男に逢坂の、関より辛い世の慣い
逢わずにいんではこの胸が、すまぬ心の置炬燵
粋が取り持ちようようと、明けりゃ夫婦の松飾り。
「夕暮」
夕暮に、眺め見渡す隅田川、月に風情を待乳山
帆上げた舟が見ゆるぞえ、アレ鳥が鳴く鳥の名も
都に名所があるわいな。
首尾も良く、互いに逢うたその時に
積もる口説で夜を更かし、話す言葉が尽きぬぞえ
アレ鳥が鳴く明の鐘、又の御見を待つわいな。
夕暮に、眺め見渡す池の端、花に風情は東台の
木陰に椅子が見ゆるぞえ、アレ雁が鳴く鴨の声
御山に名所があるわいな。
夕暮に、眺め見渡す箱根山
雪に風情はお富士山、海に白帆が見ゆるぞえ
箱根八里は馬でも越すが、越すに越されぬ大井川
アレ鈴が鳴る馬子の唄、湯本の名所があるわいな。
秋の夜に、遠音床しき玉川の
月を灯りに小夜砧、残る蛍が見ゆるぞえ
アレ虫が鳴く虫の音も、千草に風情があるわいな。
吹くままの、風にまかせる糸柳
嫌な客にも比翼ござ、苦界の淵が辛いぞえ
アレ忍び寝のささめごと、間夫に勤めの憂さ晴らし。
夕立に、すっかり濡れた薄羽織
かけて干させる衣紋竹、思いの丈は長くとも
アレ着やしゃんせこの浴衣、女房気取でいるわいな。
夕桐に、心尽くせし伊佐衛門
時に師走の餅の宵、障子に蔭が写るぞえ
アレ足で蹴る夕桐は、万歳傾城と云うわいな。
夕暮に、行き来絶えせぬ納涼船
仇な姿の薄化粧、赤い鹿ノ子も見ゆるぞえ
アレ雲間には散る花火、ほかに愉快があるわいな。
「夕立の」
夕立の、あまり強さにチョイト雨宿り
傘を借りよかこのまま行こか
ままよこのまま濡れて行く。
「夕立や」
夕立や、田を三囲の神ならば、葛西太郎の洗い鯉
酒が昂じて狐拳、ほんに全盛なことじゃえ、堀の船宿
竹屋の人と呼子鳥。
「夕立や」
夕立や、さっと吹き来る閨の内
ピカピカおお怖、雷さんは怖けれど
私がためには出雲から、結んだ縁の蚊帳の内
憎や晴れゆく夏の空。
「雪の朝」
雪の朝の朝ぼらけ、浪花の浦の真帆片帆
行き来の船で便りする、私ゃこうしているわいな。
「雪のだるま」
雪のだるまに炭団の目鼻、解けて流るる墨衣。
「雪はしんしん」
雪はしんしん夜も更け渡る、どうせ来まいと真ん中へ
一人ころりと肘枕、何時じゃ、ええ寝入られぬ。
「雪は巴」
雪は巴に降りしきる、屏風は恋の仲立ちや
蝶と千鳥の三つ蒲団、元木に帰るねぐら鳥
まだ口青いじゃないかいな。
客はやたらに上がりけり、女郎は恋の手取者
ちょいと座敷を抜け出でて、格子へ忍ばす間夫の顔
まあ引け四ツ過ぎまで待ちなんし。
月は雲間に入汐の、合図は恋の道標
ちょいと仮寝の投げ布団、人目を兼ねる忍び路に
またいつ逢うじゃないかいな。
花の思いは雪の中、ほんのり見ゆる福水に
仇と情を白梅に、恋にはめげぬ水仙も
まだ春をひとえのかさやとり。
投稿者: minminmin
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