2018/6/13

4474:ゴール  

 平坦区間を走り切って、最後の上りへ向かった。ゴール直前は斜度が厳しい。平坦区間をほぼ単独で走ったため、脚の余力はほとんどない状態であった。

 「厳しい斜度の坂道が尽きる先にはゴールが待ち構えている・・・もう少し・・・」その気持ちだけで最後の試練に挑んだ。

 ダンシングでペースを少しでも上げようとするが、体も脚もなんだかスカスカな感じで、力感が薄かった。

 サイコンのパワー表示を見るが、220ワットぐらいしか出ていなかった。気持ちだけはスパートしているのであるが、実際にはここまでの長い道のりを走ってきた際のパワーと大差なかった。

 ようやく視界の先にゴールが見えた。最後にもがいた。道路を横切る緑色の計測ラインが見えてきた。そしてそのラインをロードバイクの前輪と後輪が相次いで越えていった。

 その際、サイコンのストップボタンをすかさず押した。サイコンに表示されたタイムは「1:23:00」であった。

 ゴールして脚を止め、惰性でしばし走った。そして、ロードバイクを止めて左足のクリートをペダルから外し、左足を地面に着けた。

 続いて右足のクリートもペダルから外し、ロードバイクから降りた。少しロードバイクを押して歩いた先に、上面が平らに形成された石が道の脇にいくつか並んでいた。

 腰かけるのに丁度いい高さである。私はそこにKuota Khanを右手で支えながら腰かけた。咳が数回出た。

 肺と気管を酷使しすぎたのであろう。咳はなかなか収まらなかった。そこに腰かけながら、咳が収まるのを待った。

 激しく何度か咳込み、表情は苦しげであったが、心の中では自己ベストを更新できたことを喜んでいた。

 昨年のタイムは1時間24分12秒。一昨年のタイムは1時間23分42秒・・・この一昨年のタイムが私の自己ベストであった。

 そのタイムを42秒短縮することができた。これは私にとっては満足できるタイムである。この年齢になって自己ベストを更新できたことは、やはり嬉しいことであった。

 先月の試走時のタイムがあまり良いものではなかったので、自己ベストの更新は難しいであろうと感じていた。

 しかも前日樹海台駐車場まで軽めに走った時の脚の具合もそれほど良いものではなかった。そのため、自己ベスト更新というよりも、どうにか1時間25分は切りたいという具合に目標設定はかなり現実的なものになっていた。

 しかし、蓋を開けてみると自己ベストが更新できたのである。これは、うまく集団走行のメリットを活かせたことが大きい。

 一方的にライバルとみなしているロードバイク界のアイドル的な存在である日向涼子さんは、今回は「女子選抜」にグループ分けされてしまったため、ペースの合う集団と走ることができずに、1時間25分55秒という、彼女としては不本意なタイムに沈んだ。

 私の場合、その点で恵まれていた。周囲にはペースの合うトレインが断続的に流れていて、それらを乗り継ぐことができた。唯一平坦区間のみスピードの合うトレインは見つからなかったが、それ以外の区間では集団走行のメリットを目一杯享受することができたのである。

 咳がようやく収まって、リュックを受け取るために駐車場エリアに降りていった。荷物を受け取り、チームメンバーが集まっている一角に向かった。

 雨は降りだしてはいなかった。霧が辺りを白く煙らせていた。富士山はその霧に阻まれてまったく見えなかった。

 「お疲れさまでした・・・」「どうでしたか・・・?」「自己ベストを更新できました・・・」「それはすごい・・・!」チームメンバーと挨拶を交わして、私はその一角に座り込んだ。

 雨は何時降り出すか分からない状況であった。しばし、疲れ切った体を休ませた。「雨が降る前に防寒着を着ないと・・・」と思い、立ち上がろうとした瞬間であった。

 右脚の太腿が攣った。その激しい痛みに顔をしかめた。その痛みは簡単には引かずにしばし続いた。

 ようやく痛みが引いてきたが、動かそうとするとまた痛みが襲ってきた。立ち上がることは一旦あきらめて脚をとにかく休めることに専念した。

 ようやく防寒着を着用するために立ち上ったのは、筋肉が激しく攣ってから10分以上の時間が経過した後であった。

 雨が降ってこなかったので、チームメンバーが全員走り終えるまで皆で待った。待っている間に徐々に体が冷えてきた。防寒着はしっかりとしたものを準備していたが、気温が低く、筋肉は寒さに小刻みに震えていた。



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