2018/7/14

4505:依頼  

 「響工房」の井村さんは、若かりし頃ブルースギターに嵌まった。一時は本気でプロも目指されたこともあるようであるが、音楽で食べていくことは余程の才能がない限り難しい。しかもブルースというマイナーな分野ではなおさらである。

 そして、仕事としてオーディオ機器の修理を大小幾つかの会社で経験されて、ご自身の工房を持たれたようである。

 作業所の脇には何本かのギターが置かれていた。話が弾むうちにお互い打ち解けてきて、井村さんはギターの演奏も披露してくれた。

 この作業所には井村さんのオーディオシステムも存在していた。スピーカーはウェスタンエレクトリック製のユニットを使った2ウェイが1台とフォステクスのフルレンジユニットを使ったバックロードホーンがあった。

 どちらも聴かせていただいたが、セッティングは空間の確保が難しいため、かなりラフなものであったが、その音のバランスは自然で違和感のないものであった。

 アンプは真空管のシングルアンプで出力は数ワットとのことであった。ジャズボーカルやブルースギターを聴いた。

 こういったシンプルなシステムを聴くと、大仰なオーディオシステムの存在意義が一気に薄れるような気がする。

 「実に無駄なことをしているのかもしれない・・・」と思えてきてしまうのである。もちろん複雑で大仰なシステムにはそれなりの長所があるのであるが・・・

 結局なんだかんだで、2時半から6時半まで4時間もの間、このそれほど広くない作業所に居た。「では、よろしくお願いします・・・」「分かりました・・・今少し立て込んでいるので、時間をください・・・」という会話を交わして「響工房」を後にした。

 「ヴィンテージオーディオにかかわっている方は変わった方が多いけれど、井村さんはいたってまっとうだったね・・・話も分かりやすい・・・」

 「そうでしたね・・・音楽を真剣にやっていたというのも好印象ですね・・・音楽を全く介さない機械バカではないですから・・・」

 「こっちが言ったことを受け入れてくれるところが良いよね・・・中には頭ごなしに自分の意見を押し付けようとして、否定する人も多いから・・・」

 そんなことを車の中でAさんと話した。午後6時半・・・空はまだまだ明るさを残していた。その後、調布市にあるAさんお薦めのイタリアンレストランまで車を走らせていった。



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