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2018/4/30  19:07

遠藤周作の「王の挽歌」を読み終える  文殊(4.23は本の日)
 遠藤周作の「王の挽歌」は、キリシタン大名として知られる大友宗麟について書かれた歴史小説です。
 NHK大河で西郷隆盛のことを描いていますが、ふと・・・そういえば幕末のことで薩摩、肥前、長州などには関心があったが、九州きっての名家であった大友氏については・・・大内家の宿敵以外はあまり知らないなと思ったのです。

 大友二階崩れ(赤神諒著 日本経済新聞社)、宗麟の海(安部龍太郎著 NHK出版)、王の挽歌(遠藤周作著 新潮社)の順で次々と読みました。

 他の地域ではわりとすんなり受け入れられたキリスト教ですが、大友家は九州きっての名家で神道や仏教を守護する立場にあった。その当主がキリスト教徒になることには問題があったのでしょう。

 一方で九州探題にまでなった大友宗麟がキリスト教を保護することで、九州ではキリスト教が広がりました。
 その影響力はやはりすごいものがあったと感じます。

 ただやはり・・・大友宗麟は仏教に留まるべきだったと思います。

 ただ「宗麟の海」でひじょうに面白いことを勉強させていただきました。

 耳川の戦いで大友は島津に大敗するわけですが、その理由の一つに鉄砲をあげていたことです。

 大友も毛利と死闘を続けていた時は最新の鉄砲を懸命に集めていましたが、島津と戦う時にはいささか旧式になっていました。島津はポルトガルからマスケット銃を集め、それを種子島で量産していた。

 島津は鉄砲になくてはならない天然硫黄が豊富にあり、それをポルトガルなどに売りその金を使い鉄砲を量産していたわけです。

 大友も尾平鉱山という銀山と、温泉があるので天然硫黄をこちらでも産出し軍資金にしていたわけですけど。

 軍備への熱心さに差があったのかもしれません。

 島津は室町時代まではひじょうに地味な守護大名でしたが、安土桃山時代の途中で急に力をつけだしました。それは隼人族以来の武勇の伝統もありましたが、種子島の鉄砲に原因があることを知りました。

 そういえば明治維新でも薩摩はイギリスの新型銃を手に入れ、幕府軍を圧倒しています。

 逆に西南戦争では政府軍の銃が薩摩軍の銃より優れており、それが政府軍の勝利へと結びつきました。

 薩摩にとって種子島の銃は命綱だったわけです。

 これはあまりにも意外でした。

 大友は耳川の戦いでまずい作戦もあったものの、マスケット銃の威力を知らず大敗したわけです。

 おそらく龍造寺隆信も同じであったでしょう。

 慎重な大友宗麟なら直感で危険を察知しミスをしなかったでしょうけど、キリスト教による心の救いを求め現世への関心を失っていては、島津義久には勝てなかったわけです。

 ただ日本においてキリスト教の堅信を残した大友宗麟は、日本において明治維新以降柔軟にキリスト教文化を受け入れた基盤になったとは思います。

 茶人としても優れていた宗麟の日本文化への貢献は大と言えるでしょう。

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2018/4/15  23:45

輝ける碧き空の下で(北杜夫著)」を読み終えて  文殊(4.23は本の日)
 これも電子図書のおかげです。
 これまでは長編小説を買うとすぐに部屋がいっぱいになってしまい、読むことができませんでした。
 電子図書のおかげでスペースがいらなくなり、北杜夫さんの「楡家の人びと」と並ぶ長編小説、「輝ける碧き空の下で」を読むことができました。
 ブラジル移民について書いた小説ですが、石川達三さんの「蒼氓」といい、なぜかブラジルのイメージは青なのですね。
 「楡家の人びと」といえば、今の朝ドラマの「半分、青い」の家の姓が楡野で・・・たしかに岐阜県や長野県は豊かな森に誇りを持っていますが、何かおかしくなってしまいました。
 北杜夫さん得意のトーマス・マンの「ブッテンブローク家の人々」の影響を受けた、「ある一家の記録」がオムニバス式に出てきて、ブラジル移民の全体像を描いていくような作品です。

 こういう長編小説は感想を書くのに時間がかかりますが、この2018年4月15日(日)に読み終えたということを、書いておきたくなりました。

 この小説は最初を読んでなかなか読みませんでした。
 移民に行ったきり故郷に帰れないというのが、転勤したきり帰れない私のようで、なかなか読めなかったのです。
 4月になり帰れなかったので、かえって一気に読んでしまいました。

 それにしても何というバッドエンドだろう、大きく失敗し大きく成功することの繰り返し、そして今日系人の多くが成功を収めている。

 今リニューアルのため休館中だそうですが、以前東京都現代美術館で「トロピカリア」という展覧会を見た。
 日系人の中には芸術家や芸術ディレクターとして秀でた人がおり、サンパウロ・ビエンナーレに大きな貢献をした人が少なくないそうです。
 今、移民一世や二世の時代から長い時代がたっていますが、いつまでも日本文化を大切にしていただきたいですね。

 読み終えた感覚が、まるでブラジルの密林を開拓し大きな農園を開けたような感じで、何とも言えない爽快感がありました。

 読み終えて本当によかったし、うれしいです。

(JORNAL ニッケイ新聞 作家・北杜夫さんと独占インタビュー=ブラジル日本移民を書いた長編小説『輝ける碧き空の下で』=2回訪伯=日系人と心温まる交流=訪伯時のエピソードきく 2007年6月27日)
http://www.nikkeyshimbun.jp/2007/070627-75imin-tokusyu.html

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2018/1/21  1:40

「努力しても虚しい」と考えていたのは高校時代だけ・・・  文殊(4.23は本の日)
 私は中学時代までは、「クラスで1番ではなくても成績上位をとる」という考え方で勉強していた。
 しかし高校に入り、「どんなに努力をしても必ず上がいる、無理に努力をしても虚しいのではないか?」と考えるようになった。
 一つの理由は、一流大学を目ざすという目標がなかったからだ。
 血眼になって成績上位をとっても、得られるものがまったくなかった。

 実際高校で試験範囲なんか調べたことなかったし、人から聞いても意識して勉強しなかった。
 出るところをたまたま覚えていれば答案に書く感じだった。

 追試を受けたり補習をしたりもしたが、一応成績は中位だった。

 しかし十位以内で入っていたにしてはやる気がないことは誰の眼からも明らかで、まず追試になったことを叱られ、中学時代の成績を言われさらに怒られていた。

 横浜日野高校は悪い高校ではない、学区内で入った後輩に聞けば「あこがれの進学校」と言っていた。
 それを聞いてそう思えない自分が悲しかった。

 高校時代に論語を読んでいて、「自己修養のために学問をする」という考え方を知り、それまでのよい成績をめざして勉強するという考え方から、修養の考え方へと変わっていった。

 このブログにしても、ブログの記事を書くのに勉強しないといけないので、修養の考え方がある。

 そしてそして高校生の時に、「実学思想の系譜」(源了圓 講談社学術文庫)を読んだ。
 この本で実学とは「実用の学問」の意味ではなく、もともとは「真実の学問」の意味があり、学者が他派を批判するにあたり「自らの学問こそ真実の学問である」という意味であったことを知った。
 その中には支那人で書斎の学問を批判し、読書とは意味がない毒薬であり経験を積むことに価値があるという考え方をした人もいたことを知った。

 そして大学生になり、ゆっくり本を読み返していると、「学問は真理のためにする」という考え方が書いてあった。

 それはある思想家の考え方であったが、源了圓先生そのものの思想であることを感じた。
 そして大学ではその考え方で勉強をした。

 学問は順位をめざすものではなく、自己修養のために行うという考え方が中学時代からあってもよかった。

 その考え方を中学時代からとっていれば、高校時代にやる気をなくさないですんだのかもしれない。

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2017/12/26  22:12

日本の出版文化は新たな隆盛をきわめつつある  文殊(4.23は本の日)
 出版不況と言われますが、私は電子図書などの購入量が増えてひじょうに困っているので、実感と合いませんでした。
 出版販売額の中に、電子図書や同人誌は含まれていないだろうと思い調べましたら、やはりそのようでした。
 マンガなどは電子図書と合わせると2016年は過去最高だったそうです。
 これはマンガを好む第二次ベビーブーマー世代の、旺盛な消費意欲にあると思われます。
 しかしこれも少子化世代になると、だんだん減ってくるかもしれません。

 今はネット対応に成功したところが生き残り、遅れたところが地獄を見ていると思われます。

 図書館においても、電子図書を貸し出す電子図書館が動きだしております。

 保存についても紙か電子かという問題が出てきそうです。

【コミック】
コミック市場全体(コミックス+コミック誌)では15年連続のマイナス。コミック誌が21年連続のマイナスで、2年連続で1割以上の減少。映像化作品のヒットがなかなかあらわれず既刊が伸び悩んだ。電子コミックは3割近い伸びを示しており、紙と電子を合わせたコミック市場全体ではプラスで過去最大の規模になった。

(日本の出版統計 全国出版協会)
http://www.ajpea.or.jp/statistics/

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2017/8/23  22:15

「天人 深代惇郎と新聞の時代」を読んで  文殊(4.23は本の日)
 「天人 深代惇郎と新聞の時代」(後藤正治著 講談社)を数日前に読み終えた。
 天人は普通は仏教の天人(てんにん)ですけど、この場合は、天声人語の略ですので天人(てんじん)でしょうか?

 深代惇郎(ふかしろじゅんろう)記者、朝日新聞論説委員であり天声人語を書く朝日新聞のエースになりながら、46歳の若さで急性骨髄性白血病により亡くなった方です。

 ただ私がなじんだ天声人語は、辰濃和男さんの時代です。
 あの頃の天声人語は日本語の手本と言われ、内容的にもすばらしいものが多かった。
 今の天声人語の「平均的なコラム」ではなく、多くの国民にとっても特別なコラムであり、多くの大作家さえうならせたすばらしい名文ばかりでした。

 この後藤正治さんの江夏豊についての本を読んでいて、他に何があるのか?と思い調べてみて、この本にひかれました。

 それはこの深代惇郎さんが、横浜のわりと私の故郷に近いところにお住まいだったからです。 
 朝日新聞の記者は横浜支局の伝統的な重要性と、本社への出勤が便利であるため横浜に住んでいる人が多く、それほど珍しくはないそうですが、天声人語さんが故郷近くに住んでいたといことが感慨深かった。

 三島由紀夫事件でも堂々と民主主義の正統性を主張し、上から大衆を見下す文士気質を批判しています。
 今、三島由紀夫を「まともな保守」などというのと、何たる違いでしょうか?

 今は新聞が大衆を見下しています。
 インターナショナリズムに毒され、日本国民の気持ちより支那や朝鮮の御意向の方が大切になってしまっている。

 新聞の時代・・・記者は「国民と共に」をめざし、「国民の友」であろうとしました。

 新聞の衰退と共に、その理想はどこかに行ってしまった。

 「国民の友」…新聞にとってやはりそれが一番大切ですね。

 深代惇郎さんは新聞が衰退し、その醜態を見る前にこの世を去った。

 それは少し嫉妬を感じるほど、美しく恵まれた人生だったのかもしれません。

 (この本より深代惇郎の天声人語の一部 1974年1月5日)

 天声人語は「天に声あり、人をして語らしむ」の意。しばしばこの欄を、人を導く「天の声」であるべしいわれる方がいるが、本意ではない。民の言葉を天の声とせよ、というのが先人の心であったが、その至らざるの嘆きはつきない。



 やはり…味わい深い。

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