2008/2/17

ラ・フォル・ジュルネ 「熱狂の日」2008 今年は渋いシューベルト三昧  ニュース

ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン、4年目となる2008年のプログラムが発表になりました。シューベルトを中心にはしていますが、バッハ、サリエリ、モーツァルト、ベートーベン、ウェーバー、ロッシーニ、マーラーなど幅広い作曲家が取り上げられ、それに加え、マントヴァーニと藤倉大が音楽祭委嘱のオマージュ作品を発表することになっています(本国で初演済)。

さすがにシューベルトともなると、私でもよく思い出せない、もしくは聴いたことがない曲目が、多く含まれています。今年の「熱狂の日」は、その意味でも3回目にして、試金石となるに相応しい内容です。今年の傾向として、オーケストラよりも、規模の小さな音楽を重視しているという見方ができそうです。特に、歌曲を含む公演が多いとの印象です。オケ、指揮者は、やや控えめという感じもあり、上海、台湾、ベトナムと、アジアのオーケストラが積極的に起用されているのも目立ちます。そして、11のグループが縦横無尽に活躍する室内楽の重視は明らか。もちろん、マルタン・プロデュースだけに、ピアノに重点が置かれているのはこれまでどおりです。

これまでの「熱狂の日」の傾向では、確かに、器楽や室内楽のほうに人気が集中する傾向があり、一般的にフル・オーケストラ公演が重視されるのとは、別の傾向を示しています。これはより本場のあり方にちかいと思われますが、ベートーベンや国民楽派ならばまだしも、これがシューベルトのような晦渋な世界に変わって、なお通用するかどうかは、音楽祭にとって大事なチャレンジであると思います。私は、規模の大きな音楽の価値を重くみて、例えば室内オーケストラだとフル・オケより演奏が楽だとか、中途半端だとかいい、増して室内楽や器楽などの魅力にアプローチできない、日本的な考え方に反対しています。

【聴き比べる楽しみ】

曲目は、すこし偏りがあるかもしれませんが、それらを別のアーティストで聴き比べるというコンセプトが明確になっています。演奏回数が多いのは、シンフォニーでは、やはり「グレート」と「未完成」、歌曲では「冬の旅」、ピアノは遺作のソナタ(D960)と「さすらい人幻想曲」(リスト編管弦楽版も演奏)、室内楽では「ます」とアルペッジョーネ・ソナタ、「死と乙女」、弦楽五重奏曲・・・というあたりが、そういった楽しみ方をできる曲目になりそうです。いわゆる「人気曲」であります。

そのなかでは、まずはスペシャリストの白井光子&ハルトムート・ヘルによる「冬の旅」(公演:455)は鉄板。2人場合、敢えてここで聴かなくても、また聴けそうですけどね。レ・シエクル(F.X.ロス指揮)伴奏による、マンメルの「冬の旅」(公演:328)も外せないでしょう。「アルペッジョーネ・ソナタ」は、今井信子がヴィオラで弾くのが注目(公演:452)。同じように、ジェラール・コセも、ヴィオラで演奏します(公演:156)。こちらは人気者のフランク・ブラレイが伴奏につきました。もっとも一般的なフォームであるチェロ演奏では、アンリ・ドマルケット&ブリジット・エンゲラーという強力なコンビがあります(公演:421)。ピアノ・ソナタ D960 は、フランスの名匠、ジャン=クロード・ペネティエで聴きたいものです(公演:354)。

シューベルトの弦楽五重奏曲は、4つのクァルテットが、それぞれチェロ奏者をゲストに迎えて演奏することになっており、室内楽曲の王様にふさわしい敬意を払っているようです。イザイ弦楽四重奏団+クニャーゼフというのが、いちばん凄い顔あわせと思いますが、バランスを考えると、ベテランのドマルケットを迎えた、若いアメデオ・モディリアーニ弦楽四重奏団の変容が楽しみです(公演:134)。あと2つは、ミケランジェロ弦楽四重奏団+堤剛、ツェムリンスキー+ヴァシレーヴァという組み合わせです。最後のヤング−ヤングな組み合わせも面白そうですね。

【2つの大曲が熱狂の日の舞台に!】

驚いたのは、劇音楽「キプロスの女王 ロザムンデ」と、宗教劇「ラザロ、または復活の祝日」の演奏が組まれたこと。「アルフォンソとエストレラ」など、オペラの上演があるかもと期待していたのは裏切られましたが、これは朗報ではないでしょうか。ロザムンデは、音楽祭ではお馴染みのペーテル・チャパがロワール管を指揮して、コーラスは晋友会です。そして、ラザロのほうは、スペインを代表するコーラス・マスターのゴルカ・シエラがローザンヌ声楽アンサンブルとポワトゥー=シャラント管を指揮。

【熱狂の日アーティストたち】

お馴染みのメンバーでは、その名もトリオ・ヴァンダラーが、いよいよ主役かと思いきや、マントヴァーニの初演があるためか、今年は意外にも2公演のみと少なくなっています。イザイ弦楽四重奏団も、これまでの活躍と比べると、後半2日のみの出演は目立ちません(もちろん、人気公演とはなりましょうが)。ケフェレックも登場しますが、ほぼ主役だったかつての派手な役割からみると、活躍の場を絞った印象があります。昨年は最大の注目株だったラドゥロヴィッチについては、今回も予想どおりに出演します。ベートーベンの協奏曲といった大曲もありますが、私はケフェレックを相手にしたベートーベンとシューベルトのソナタをやる回に注目したいです。ただし、いずれも音楽祭の人気者で争奪戦は必至ですが。ラフマニノフのコンチェルトをバリバリ弾いて、昨年の総大将格だったベレゾフスキーは、昨年の日本での共演は流れたエンゲラーとの共演が実現し、4手による「ます」という特別プログラムを披露するのが注目です。ちなみに、彼は音楽祭よりも前に、スラヴァとの共演で面白い企画をやります。

【私の注目公演】

還暦を迎えんとするバーバラ・ヘンドリックスの出演は、ことし一番の話題ということになりましょうか。小品を重ねてのミニ・リサイタル、3公演をこなします。声楽で個人的に注目しているのは、5日に組まれた吉田浩之による「美しい水車小屋の娘」(公演:438)で、この才能ゆたかな若いテノールを高く評価していることもありますが、伴奏がピアノではなく、鈴木大介のギターであることがポイントになります。第1回に注目して、第3回に再来日を果たしたシャニ・ディリュカ(pf)は、美しい輝きを隠した原石のような状態からぐっと研磨がかかり、ピアニストができていくときの、いちばん面白い時期を過ごしています。今回は、シューベルトの D664 のソナタなどを披露するので、これも楽しみにしています。

書きたいことはヤマのようになりますが、あとは音楽祭の広報さんに任せましょう。大注目は、1828年3月28日の記録をもとに再現される、作曲家在世中のシューベルティアーデを模した公演であります。最終日も大詰め、Cホールの最後のコマに組まれていますが(公演:546)、多くのアーティストが出演し、様々なフォームの音楽が準備されていて、「熱狂の日」全体にも通じるようなコンサートになるはずです。

【新しい試み】

あと、有料公演用のホールがひとつ増えましたね。これは、大きな決断ということになるのでしょう。G409 キャロライン・エステルハージーと名づけられました。前2回の公演ほどの成功は得られないのではないかという意見もあるなか、音楽祭の前向きな姿勢を歓迎しますが、どうなることでしょうか。また、公式ブログによれば、音楽祭の公演がライヴ録音され、演奏終了後、すぐにCD化されて会場で販売されたという報告があります。これは是非、東京でも実現してほしいと思います。
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2009/2/20  21:33

投稿者:Poughkeepsie

早速有り難うございます。

リュートなんて古楽器良さそうですね。切符とってみようと思います。

バロック・ゾリステンのコンサートで初めてチェンバロやビオラの古楽器演奏を聴いたときの驚きを思い出しました。

明日の12:00頑張ります(笑)

2009/2/20  2:35

投稿者:アリス

ご要望にあわせて・・・というわけでもありませんが、記事をつくりましたので、参考になれば幸いです。今回は、ラ・ヴェネクシアーナが一押しです。以下、アンタイのチェンバロ、ラ・レヴーズ、マレ・サンフォニー、ブリジット・エンゲラーといったところ、好みでお選びください。

今年はマルタンと、フォル・ジュルネの後ろ盾となっているミラーレ、アルファ、ハルモニア・ムンディなどのもっとも得意とするところなので、ほとんど外れはないはずです。ウィスペルウェイは技術的には最高ですが、音楽性はかなり地味で、ドライな感じだと思います。個人的にはは、ドマルケットのほうが好きです。

書ききれなかったところでは、リュートのエグエスもかなりいいと思います。

2009/2/18  22:01

投稿者:Poughkeepsie

アリスさん、お久しぶりです。

いつも恐縮ですが「困ったときのアリスさん頼み」先行予約も土曜にせまって来た事ですし(笑)

今回チェロでは「ピーター・ウィスペルウェイ」が良いとの噂を耳にしました。

どんな演奏者、楽団に注目されてますか?

ぽき

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